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【3712】情報企画~有価証券報告書の読み方~

結論

財務状態は良好。利益率も良く、会社方針も好感が持てる。ただ、資本効率という観点が抜け落ちている感あり。

 

目次

 

前置き

情報企画は近く分析する予定ではありましたが、読者様よりリクエストを頂きましたので、前倒しで分析します。

実は情報企画は、12年前のリーマンショックの底の時に私の購入候補に挙がっていた会社です。結局、PERで比較して別銘柄を選択したのですが・・・今なお良い業績を保っているというのは、買わなかった私は若く愚かだったのかもしれません。

干支を一回りした自分が今度はどんな判定を下すのか、因縁の分析でした。

 

事業概要

まずは情報企画の事業についてです。

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情報企画の事業はメインであるシステム事業と、2013年以降に始めた手元資金の有効活用を目的とした不動産賃貸事業です。

システム事業は主に金融機関を対象としたシステムを提供しており、業務の内容から以下二つに部門が分かれています。

①システムインテグレーション部門

金融機関のニーズを受け、信用リスク管理パッケージソフトウェアを開発する部門。単に信用リスク管理だけでなく、債権償却や融資稟議など、金融機関ならではの業務の専門パッケージなども作っているようです。金融機関向けのシステム何でも屋さん、といったところでしょうか。

一応、一般事業会社向けにも3つほどパッケージを出しているようですが、種類の豊富さから言っても主力は金融機関でしょう。

 

②システムサポート部門

①で開発したシステムの運用、メンテナンス、代行入力などを担当する部門。いわゆるカスタマーサポート部門ですね。

 

売上規模が小さいため、金融機関といっても三菱や三井といった所謂メガバンクではなく、信金等地方の中小規模の金融機関をメインターゲットにしているのでしょう。

一応事業上のリスクを見てみると顧客が載っていました。

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顧客は地方銀行第二地方銀行信金信用組合ですね。

そういった会社さん宛にパッケージ型のシステムを販売し、カスタマイズ、保守運営するビジネスのようです。

前に私がいた会社に地方の信金から転職してきた方がいたのですが、今でもPCが導入されておらず紙資料で手書き管理している、という嘘のような話を聞いた事があります。

実際、その方は30代だったのですが、Excelも触った事がない状態でした。

そうした状態の金融機関であれば、まだまだシステム導入する余地はあるのかもしれません。

 

懸念があるとすれば、そもそもメガバンク以外の金融機関が今後どこまで生き残れるか、という点です。売上の9割を占める主要な顧客が今後大きく発展する見込みがなければ、情報企画自身が発展する余地も限られてきます。

それもあっての一般事業法人向けシステムの開発も始めているのかな、と思いました。。

一見金融機関向けと言いつつも、一般事業法人にも転用できそうな総務・経理業務へのシステム開発をしているあたり、粛々とリスクヘッジに動いている感じがします。

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ただ、経営戦略のところでは、主要販売先は今後も金融機関であると明言しており、今後はメガバンク向けを目指すと言ってます。

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今まで通りの金融機関に特化してより大手顧客を狙うのは、(突然これまでやっていなかった一般事業法人向けのシステムにターゲットを移すよりも)戦略としては非常に正しいと思います。

 

この辺り、大枠での戦略を変更せず邁進していく一方で、万一の時のリスクヘッジを怠っていない感があります。もし、意図的にやっているのなら、抜け目ない経営陣、という印象です。

 

セグメント別

セグメント別を確認します。

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システム事業:27.2億円(95.3%、利益率35.8%)

不動産賃貸事業:1.3億円(4.7%、利益率37.1%)

いずれも素晴らしい利益率ではありますが、不動産賃貸事業に関して言えば利益率だけでは評価すべきではありません。

不動産賃貸事業はそもそも経費が維持管理する費用と減価償却費程度なので、売上高利益率が良いのは当たり前です。本当の意味で不動産賃貸事業を評価するのであれば、拘束される資本に対してどれだけの利益を出しているか、という視点を入れる必要があります。

つまりセグメント資産の項目である20.2億円を拘束して0.5億円を稼いでいるわけですから、実質的な利回りとしては2.48%という事です。これは資本効率から見るとかなりマズい結果と言わざるを得ません。たったこれだけの利回りを得るのであれば、手堅い会社の株式を買うか、適度に分散されたポートフォリオを組むか、インデックスファンドを安定的に買い続けた方が、資本効率的にも換金容易性から見てもはるかに優れていると思われます。

手元資金運用で不動産事業という発想は、デフレや人口縮小が続く現代ではかなり分の悪い賭けではないかと思います。

 

 

 

業績推移

経常利益率の推移は26.8%⇒31.3%⇒34.7%⇒34.4%⇒35.9% 

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売上が伸びるのとほぼ同じ形で経常利益率も上がっています。売上が伸びつつも経費を適切な水準に抑えられているという事であり、良い傾向だと思います。

リーマンショック時に購入を躊躇した私からすると、さらに過去からどれくらい伸びているかも気になるので見てみると・・・

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経常利益率の推移は11.7%⇒15.6%⇒21.1%⇒26.2%

9年前~7年前くらいで劇的に利益率が良化していますね。。

何らかの方針転換があったか、ちょっと気になるのでPLを見たいところですが、当時の有価証券報告書がEDINETにも残ってないので詳細は不明です。

とはいえ、その後も継続的に経常利益は売上の伸びと共に利益率が良化しているので、その変化はある程度意図的に行われ、維持されているものと推測して良いと思います。これは会社の体質としてポジティブな印象です。

 

 

 

経営方針

経営指標としては売上高営業利益率30%以上、一人当たり売上高20百万円以上、という指標を持っています。

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これらの指標は絶対値評価ではない体質評価で、なおかつ具体的な数値を置いているのは素晴らしい目標だと思います。普通の会社さんであれば「体質良し」で評価は終わります。

ただ、情報企画の場合、不動産賃貸事業があります。

先ほど分析した通り、不動産賃貸事業は余計な経費が無いため、売上高営業利益率が高く、それに関わる人間もほとんど必要ないため、若干とはいえ売上高営業利益率と一人当たり売上高の数値が嵩増しされる事になります。

これでは資本効率の悪い不動産投資をガンガンやれば評価が上がる理屈になりますが、そうなると会社としては資本効率がどんどん悪化していくため、設定する指標としては不十分だと思います。個人的には情報企画は第三の指標としてROEを導入すべきだと思います。

 

 

 

キャッシュフロー

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キャッシュフローは良い感じです。投資活動のキャッシュフローは営業活動のキャッシュフローの概ね半分程度に収められており、無茶な投資はしていない印象です。手元資金も充実していますから、資金繰りに困ることは無さそうです。

ただ、キャッシュが潤沢な割に、フリーキャッシュフローの使い道に難があるな、という感じです。資本効率の悪い不動産投資をしている点もそうですし、配当性向も手元キャッシュの割に高くありません。

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配当政策については、概ね40%という還元方針を出しています。

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ただ、この辺りは少々不満で、そもそもなぜ40%なのか、自社株買いと比較して何故配当という還元方法を取っているのか、その辺りが全く考慮されていない印象です。

概して同社は資本効率という観点がゴッソリ抜け落ちている印象があります。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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現預金が21.5億円(41.6%)で十分な水準です。

建物と土地はほぼ賃貸用不動産20.1億円(39.0%)です。

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もし不動産事業をしていなければ、同額の現金が株主還元かもっと効率的な資産運用に回されていたことでしょう。効率という意味では非常に残念な状況です。

 

負債、純資産を見てみます。

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有利子負債はない、無借金経営です。

正直、資産運用に不動産という手段を選んだのは、借入をすることで得意先である金融機関に貢献する意図があるのかな、とも考えたのですが、その可能性もなくなりました。満額現金で賃貸用不動産を買ったようですね。実に非効率です。。

 

役員退職慰労引当金の割合が多いようにも思いますが、年数億円の純利益を稼ぎ出す情報企画という会社を創業した人たちの功績を考えれば、2.3億円という退職慰労金は多すぎる事はないのかな、と思います。

設定方式については、「範囲内で代表取締役(オレ)が決める」というかなり俺様的仕様なので、ちょっとその辺りは倫理的統制がいまいちかな、という印象です。

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純資産は手厚く22.1億円です。これなら資産状況と見比べても十分健全ではないかと思います。

 

 

 

役員の状況

情報企画は結構最近、社長が創業者から創業者の息子さんに変わっています。

情報企画社長に松岡勇佑氏 :日本経済新聞

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同族経営はマイナスの印象です。

ただこの息子さんも単なる七光りという感じではなさそう。

東大卒エリートからのシンプレックス・テクノロジー入社、そしてあずさ監査法人に入所して公認会計士登録と、システム⇒会計と明らかに将来情報企画の事業を引き継ぐべく仕事を選択している印象。

学歴や職歴は人格や経営能力を保証するものではありませんが、ここまで将来を見据えた職業選択は、短慮な人間ができる選択ではありません。ある程度の見識を備えた人物と見るのが妥当な評価ではないかと。

とはいえ若い経営者ではありますし、経営の実績はありません。

同族経営の会社で世代交代が起きた以上は、これまでの体質=今後の体質と考えず、しばし静観した方が良いかもしれません。

 

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まとめ

財務体質としては資産状況や純資産の金額を照らし合わせても優良と言えます。利益率も効率で推移しており、売上規模が拡大しているからといって利益率を下げることもなく、着実に上げてきているため、キッチリ経費の統制も利いている印象です。キャッシュフローの管理もできている印象なので、概ね基礎的条件はそろっています。

ただ、総じて資本効率に関する観点がありません。

資本効率は投資家にとってはかなり重要な課題ですが、会社を支配している人間にとっては、良くしたところで現金が社外に流出するだけなので、あまりメリットがありません。だからこそ、その点は支配者一族が少数株主をどのように捉えているか、という姿勢を如実に表します。正直今の状況は、支配者一族の資本効率に対する姿勢は甘いように感じます。

創業者の松岡氏は未だに代表権のある会長ですから、当面はその方針は変わらないでしょうし、新社長もどういった考えを持っているのか未知数です。あまり期待しない方が賢明だと思います。

 

冒頭で書いた通り、情報企画はリーマンショック時に見送ってしまった因縁の銘柄です。ただ、今見た限りでは、情報企画も決して体質として完璧ではないようです。

リーマンショック時にもし私が同社の株を買っていれば、資本効率云々を抜きにしても相当儲けていた筈なので、どのみち負け犬の遠吠えなんですが、今の時点で情報企画を買うかと聞かれてもちょっと二の足を踏んでしまうかな、という印象です。

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

企業分析リンク

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