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【3655】ブレインパッド~有価証券報告書の読み方~

結論

50メートルのハードルを飛べと言われている棒高跳びのオリンピック選手。財務は強固で体質も優良、後は会社の伸びしろがどこまであるかだが、株式市場に課せられたハードルが高すぎて可哀想。

 

目次

 

前置き

ブレインパッドは元々調査予定でしたが、読者様よりご要望頂きましたので、前倒しで分析します。

 

事業概要

まずはブレインパッドの事業についてです。

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ブレインパッドの事業は、会社が持っているデータを活用して分析するアナリティクス事業と、そのデータを有効に使い続けるシステムを開発するエンジニアリング事業とがあります。

エンジニアリング事業の中でも、他社ソフトウェアの導入を手助けする事業(ソリューション事業)と、自社でソフトウェアを作る事業(マーケティングプラットフォーム事業)の2通りがあり、アナリティクス事業を含めて合計3つが同社のセグメント区分になっています。

ビジネスの性質としては、コンサルティングとソフトウェア会社の中間だと思います。

コンサルもソフトウェアも固定資産や在庫を持たないタイプのビジネスですから、会社としては財務的に余裕のある会社であると推測されます。

 

セグメントの状況

セグメントの状況を見てみます。

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アナリティクス事業:24.0億円(42.3%、利益率42.6%)

ソリューション事業:18.3億円(32.1%、利益率27.1%)

マーケティングプラットフォーム事業:14.5億円(25.6%、利益率22.4%)

 

全体的に利益率はとても高いです。特にアナリティクス事業は超優良レベルです。

1点意外なのはソリューション事業と、マーケティングプラットフォーム事業ではソリューション事業の方が利益率が良いです。

ソリューション事業は他社ソフトの導入を手伝うビジネスですから、普通に考えれば利益率は低く、逆にマーケティングプラットフォームは自社製品ですから、利益率が高そうなものです。自社製品開発に対する投資が上手く成果に結びついていないのかもしれません。

 

ちなみに、直近でブレインパッドはソリューション事業とマーケティングプラットフォーム事業は統合してプロダクト事業になってます。

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この統合は、考え方としてはスマートなのかな、と思います。

ブレインパッドは顧客に対してデータ分析に基づいたコンサルティングを行い、場合によってシステム導入を提案するわけですが、顧客にしてみれば、システム自体がブレインパッド製であっても、他社の製品であってもどうでもよい話です。

(問題さえ最善の形で解決してくれれば方法はなんでも良い)

顧客のことを真に考えるならば、ブレインパッドのコンサルティングは他社、自社関係なくシステムをフェアに比べて、顧客にとっての最善を提供できなければ、コンサルティングとしての質にも影響します。

そこをフラットにする意味でも、自社製品、他社製品の垣根は取り払われるというのは良い施策ではないかな、と思います。

 

 

 

業績推移

経常利益率の推移は3.7%⇒7.9%⇒4.1%⇒13.8%⇒21.4% 

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直近で急激に利益率を上げてきています。

理由は何なのか、構成を見てみます。

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アナリティクス事業の売上成長が著しいです。

利益率もマーケティングプラットフォーム

アナリティクス事業:35.0%⇒42.3%

ソリューション事業:21.4%⇒27.1%

マーケティングプラットフォーム事業:24.3%⇒22.4%

こうして見ると、アナリティクス事業、ソリューション事業の利益率向上によるものだと分かります。

P/Lを見た感じでは売上の伸びが131%なのに対し、売上原価が123%の伸び、販管費115%の伸びで売上に比べるとコストが増えていない事によるもののようです。

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この利益率の良化を経営陣が意図的にしているならば、体質としては良好だと考えられます。単に売上が伸びに経費が追い付いていないだけであれば、後々コストが膨らみ利益率が下がってくる可能性もありますから体質はあまり良くないと言えます。

 

 

 

経営方針

同社は重視する財務指標として経常利益、ROEを挙げています。

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ここからは残念ながら売上高利益率は挙げていないため、意図的にそこを引き上げている姿勢は見られません。

ただ、実際の経営分析の中では、案件利益率という言葉が散見されます。

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案件ごとの利益率を把握しているという事は、表向きに指標として採用していないものの、内部ではその数値管理が行われているものと推測できます。

ただ、数値管理しているからといって、方針として重視していなければ、悪化したとしても改善されるとは限りません。ROEと経常利益の絶対値だけが目標なら、付加価値率を下げてもそれらを達成しようとする事はあり得ます。

付加価値率の低下は長い目で見て、会社の力を弱めます。

同社は目標に付加価値率という観点も入れて、かつ達成したい具体的目標数値なども明示して結果にコミットできれば、一段体質として向上するのではないかな、という気がします。

 

 

 

キャッシュフロー

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3年前まではカツカツな印象でしたが、ここ2年は売上の伸びに伴い営業キャッシュフローが一気に伸びています。売上が増えても在庫や設備投資を増やす必要が無いので、儲かり出すと一気にキャッシュリッチになるのがコンサルやIT企業の強い所です。

ちなみに珍しいことですが、ブレインパッドは直近で財務活動キャッシュフローが一切ありません。借金等がなかったとしても、大抵の会社は配当を行うので、ゼロという事はないのですが、配当政策を見てみると

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創業以来無配だそうです。

しかしその理由や考え方はなるほど、と納得できる内容です。

「資本効率を考慮して~%配当します」(いつもと同じ)

⇒いやいや絶対考えてないでしょ。。前回のコピペしてるでしょ。。

という会社さんよりよほど信用できる内容です。きちんと財務目標であるROEを意識した上で、還元方法として配当だけでなく自社株買いも選択肢に入れている点は、非常に好感が持てます。少なくとも株主に対して誠実な姿勢が見えます。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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現預金は20.5億円(52.0%)と、資産の半分を占めてます。実にリスクの低い帳簿です。

売掛金が8.9億円(22.9%)と資産の中の割合としては多めですが、滞留日数は56.9日と滞留している様子はありません。急激に売上を伸ばしている今、売掛金が増えるのは当然です。

資産内容でもう一つ着目すべきはのれんです。直近では8.1百万円まで減ってますから、今後の影響こそ少ないですが、のれんという勘定に対してどのようなスタンスを取るのかはM&Aに対する姿勢も見えると思います。

のれんは買収した会社の純資産と購入した価額の差額です。つまり、のれんとは実体のない架空の資産ですから、少なくとも当ブログの方針として価値を認めてません。よって会社の資産としての評価はしませんし、仮に発生して早々に償却してPLに反映するのが賢明な経営者だと思っています。

同社は会計基準は日本基準を採用していて、日本基準の場合、のれんは1年~20年で償却を行います。

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ブレインパッドは5年間の償却を行っています。税務の償却方法も5年の償却なので、多くの会社が5年で償却します。(会計上の数値と税務上の数値がズレると調整が面倒)なので、これ自体は普通の償却方針です。

ブレインパッドが普通と違うのは、は直近期でのれんの減損損失を計上しています。

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会社によっては明らかに売上が落ち、損失を計上し、のれんの価値がなくなっている状況でも、様々な理由を付けて断固としてのれんを減損しない方針の会社もあります。そうした会社は嘘こそついていないものの、ほとんど現実的に裏付けのない資産を帳簿に載せ続けているわけですから、少なくとも投資家に対して不誠実です。

こうした会社のありがちなパターンは、M&Aによって売上や経常利益を伸ばす事で見せかけの成長をして、不景気になったタイミングでのれんの減損や大赤字を出し、全てを不景気のせいにする、という手法を取る事が多いです。

ほとんどの投資家は業績(PL)しか読まないのでこの手のペテンを見破る事はできないからです。

一方で、ブレインパッドは日本基準及び税法のルール通りとはいえ、きちんと5年でPLに反映させ、なおかつわざわざ減損処理を行っています。理由はのれんについて当初想定していた収益が見込めなくなったため、回収可能価額まで減額した、と書いてますが、そもそも当該セグメントは赤字にすらなっていません。会計士がゴネたとしても、減損しないと突っぱねる論拠はいくらでもひねり出せます。

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それをきちんと回収可能価額まで算定して減損処理を行っているというのは、買収の時点で、発生するのれんの回収可能性まできちんと見通して買収し、毎期きちんと管理していなければできない芸当です。

こうした事ができる会社は不用意な買収などしませんし、そもそも財務的に堅実な考え方をするものと推測されます。

配当の方針を読んだ時にも感じましたが、同社のマネジメントは財務的にかなりスマートで誠実な印象を受けます。

 

 

負債、純資産を見てみます。

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有利子負債はゼロの無借金経営です。

純資産が26.9憶円(69.5%)と手厚いですし、資産内容の優良性を考えても、財務的な不安は一切ありません。かなりの優良さです。

 

 

 

従業員の状況

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従業員数が売上の増に伴ってここ5年で倍くらい増えています。ブレインパッドはほぼコンサル事業ですから、人を増やさなければ売上を伸ばす事は困難ですから、仕方ないとは思いますが、規模が拡大してどこまでサービスの品質とコストを維持できるかは今後の課題です。

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平均34.7歳に対して700万弱というのは待遇として、決して悪くは無いと思います。(コンサルティング業界の中では多くはない気がしますが。。)

ただ、採用したばかりの人にジャンジャンお金をバラまいても仕方ないというのは同意見なので、無難なところかな、と思います。

条件としては悪くないと思うので、同社が飛躍するのかは、社内の文化や環境によって、能力のある人が定着するかどうかにかかっているのかな、と思います。

同社もこの人の部分についてはリスクとして警戒してます。

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ここで「固定費」というワードが出てくるのは、結構ポイント高いです。つまり、マネジメントが単なるイケイケドンドンな人ではなく、守りも見据えたコスト意識のある方である事が覗えます。

 

 

 

 

まとめ

ビックデータとかAIとか聞くと、流行りものに乗っただけのパリピビジネスではないかと、私などはうがった見方をしてしまうのですが、マネジメントは結構しっかりしている印象です。少なくとも財務基盤はこれ以上ないくらい頑強ですし、他の質的な部分からも経営陣のかなりスマートな部分や誠実な感じがちょいちょい垣間見えます。

足元の基礎となる考え方や財務基盤がしっかりしているので、後は市場の拡大に伴ってどこまで高く飛べるのかな、という所ですが、ブレインパッドのビジネスは人に依存したコンサル的なビジネスで、グーグルやアマゾンのようにコンテンツに紐づくビジネスではないから、爆発的に業績が伸びる事は無いんじゃないかな、という気がします。

今時点で既にPERは210倍なので

https://www.nikkei.com/nkd/company/?scode=3655

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期待に応えるだけのジャンプをするだけでも至難の業だとは思いますが。。つくづくと、今の株価は狂っていると感じます。。

いくら世界レベルの棒高跳び選手でも、助走無しで50メートルは飛べません。

テンションマックスの時は棒高跳びのオリンピック選手に50メートル飛べなかったら「何故飛べないんだ、この無能が」とキレて、テンションが低い時は3センチを飛び越えても「いやそんな筈はない」と疑う、そんな株式市場。

経営陣はそんな躁鬱病患者の期待など無視して、淡々と企業価値向上に努めて頂きたいと切に願います。

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

企業分析リンク

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