企業分析アナトールの株式投資

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【アフターコロナ】バフェットの「世界が変わる」について考える

昨日に引き続き投資ネタです。

www.nikkei.com

ウォーレン・バフェットという人は十把一絡げの評論家と違い、普段は話題性のために大げさな事をいう人ではありません。リーマンショックの時も、事前にサブプライムローンの問題について言及し、「デリバティブ大量破壊兵器」と多少刺激的な言葉を使って批判したりしてましたが、意味もなく「世界は変わる」というような抽象的でオーバーな事を乱発する人ではありません。

つまり、バフェットがあえてその表現を使ったという事は、本当に「世界は変わる」可能性が高いと考えるべきです。

問題はどう変わるのかなんですが、個人的に「世界は変わる」に該当するようなシナリオを書いてみます。

目次

 

シナリオ1:航空会社はどうなるか

今回のコロナが収束せず、航空会社が次々破綻していくとします。普通、ライバルが破綻すれば、残った会社に顧客が集まり、生き残った会社はむしろ以前よりシェアが上がって強くなるのが通常です。なので、こういうケースでは、苦しい業界の中でも優秀な会社を見つけて株を購入しておくと、復活した時に大きな利益を得られるのが常道でした。

f:id:umimizukonoha:20200401230204j:plain私はこれでJALが生き残り、より強い会社となる事を期待して投資してます

 

「世界が変わる」可能性:航空会社の国有化

例えば仮にJALだけが残れたとしても、JAL一社ですら生き残れなかった場合です。つまり、今回のコロナの影響ですべての航空機に感染対策をする必要が出てきて、

①感染対策のために航空機を総取換する必要が出てくる

②一機で運べる人数が減ってどこに行っても採算割れするようになる

③感染対策コストを値段に転嫁すると誰も海外旅行をしなくなる

つまり航空会社というビジネス自体が成り立たなくなる可能性です。自前で感染対策機を保有しきれなくなったり、持てたとしても相応の顧客が獲得できなかった場合、その会社は自力での存続が不可能になります。

さすがに国としては自前の航空会社が一社もない、という状況になると困るので、資金を供給する事はあるかもしれませんが、もはやそれは企業ではなく国のいち機関です。その場合JALの破綻の時と同様、株券は紙きれになり、再上場もなくなるでしょう。

 

シナリオ2:原油関係はどうなるか

バフェットは米石油開発会社(オキシデンタル・ペトロリアム)にも投資していますが、これについても悲観的な見方をしているため、原油についても少し考えてみます。

別記事でも書きましたが、WTI原油が史上初のマイナス価格を記録してます。これには中東とロシアの政治的な部分も絡んでいますが、単純に世界経済の停滞と航空業界の需要減も大きいのではないかと思います。シナリオ1で考察した通り、世界中の人の行き来が減り、航空業界がダメになるほど需要が減少してきたら、原油価格がずっと停滞する可能性も考えられます。

普通に考えれば、これだけ価格が下がると石油開発会社が次々に潰れていって供給が減り、価格は上向くでしょう。

f:id:umimizukonoha:20200401230204j:plain採掘会社は日本にもあるんですけど、正直財務体質的にあまり良くないので私は投資を敬遠してました。

 

「世界が変わる」可能性:原油採掘会社の国有化

原油は軍事戦略上、最重要といえる物資であり、これの不足は戦争の敗北に直結します。中東やロシアは政府がそれをおさえており、有力な収入源となっています。しかしこれは逆に言えば、どれだけ原油価格が下がっても、国が補填して採掘を存続し続けるということです。つまり、少なくとも供給は中東、ロシアが供給する分以下にはなりません。なので、もし需要がこの二か国が供給する量に満たない場合、ずっと原油価格は低迷し続けるということです。その結果もしアメリカなどの採掘会社が潰れたら、非常に危険なので、アメリカ政府が国有化して支援してしまうという選択肢だってあると思います。この場合も実質破綻ですから株券は紙きれですね。。

 

P.S.オイルマネーの干上がり

これはついでですけど、中東のオイルマネーは世界中に広がってるでしょうから、原油価格の低迷が続けば、中東政府は世界中から資金を引き揚げるようになる可能性もあります。そうなれば二次的な危機(パニック売り)の発生も考えられます。SBGのビジョンファンドにもオイルマネーがかなり入ってましたよね。。

 

シナリオ3:インフレはどうなるか

各国が金融緩和策、経済対策(中央銀行が政府から国債を購入して、政府がお金を得て、そのお金を民間に配る行為の事)をガンガンやってます。こういう事をすると何が起こるかというと、短期的には民間が助かるのかもしれませんが、最終的にはインフレが起こり、モノの価格が上がります。インフレの代表的な指標である金価格は2000年に入ってからかなり上がってますが、さらにここから急上昇する可能性があります。

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https://lets-gold.net/chart_gallery/long_term_chart.php

金が上がったって別にいいじゃん、と思うかもしれません。実際、金なんて実需はほとんどなくて投資用やら宝飾用だったりするので、生きるのには関係ありません。しかしこれがもし、農産物や金属まで波及した場合、私たちが生活するために必要なお金が増えます。これまで2,000円で買えたコメが4,000円でしか買えなくなったら、私たちの貯金は半減したのと同義です。

買占めの原理と同様、こうした「何もしなければ資産が減価する恐怖」と「自分だけは助かりたいという欲望」がまた人々を農産物や金属への投機に走らせ、さらに価格が上がってしまう

これがインフレの恐怖です。

 

シナリオ4:スタグフレーション、戦争

世界三大投資家の一人であるジム・ロジャーズ氏が何かの本で書いてました。

混乱した国がやることはまずお札の増刷、そして戦争だ

経済の基礎的な話をすると、普通、モノの値段が高くなると景気は良くなるのです。「モノの値段が上がるということは需要に対して供給が少ない状況だからモノが良く売れている」と解釈できるからです。しかし、これが需要は特にないのに、単にモノの値段が上がるだけのインフレであれば話は別です。つまり景気は悪い癖に、モノの値段だけが上がる状況、これをスタグフレーションと呼びます。想像してみてください。仕事も貯金もないのにモノの値段が上がってくる状況。怖っ。

景気が停滞している今、ガンガン市中にお金を回せば、場合によっては景気は悪いまま、モノの値が上がるなんてこと(つまりスタグフレーション)は十分考えられます。そうすると何が起こるのか。

人間というのは生活の苦しさを誰かの責任にする性質があります。このはけ口が自分たちの政府であるうちはまだマシですが、

怒りが他国に向かうようになると「戦争」が起こります。

場合によっては政府が自分たちへの批判をかわすために、仮想の敵を生み出すことも考えられます。考えたくはありませんが、戦争の可能性は常に頭に入れておく必要があるでしょう。。

 

まとめ

私が今考えている「世界が変わる」シナリオはこんなところです。バフェット氏が一体何を意図して「世界が変わる」と言ったのかは分かりません。が、多分何かしら大きく変わる部分があるのでしょう。

しかし、それでも投資家として多分やることは変わりません。

自分が優良であると信じる会社の株を、稼ぎだすであろう利益に対して割安な値段で購入する。多分JALも下がれば買い増します。

可能性を考えればキリないし、上に書いたような国有化の可能性だって無きにしもあらずでしょうけど。。それを言うなら私が明日交通事故で死ぬ可能性だって無きにしもあらずですから。。

自分で正しいと思う道を辿るしかないです。それで失敗したって、自分がバカだったってだけの話じゃないですか。前に進まない理由にはなりません。