この記事は、主に就職活動中の学生向けの記事です。
前回、財務的に倒産する可能性の高い会社の調べ方を説明しました。
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要するに、会社の利益ではなくキャッシュフローを見ろ、特に営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの合計であるFCF(フリーキャッシュフロー)を見ろ、という説明をしました。
基本的に危ない会社はそれで見破れます。
しかし、実はこのフリーキャッシュフローが少なくても優良という会社もあるのです。
それがキーエンスという会社です。
今回はそのキーエンスという会社がなぜフリーキャッシュフローが少ないのに優良なのか、という事について解説したいと思います。
目次
前回のおさらい
先ずは前回の通りにチェックしてみましょう。
キーエンスの利益を見てみると、順調に利益を稼ぎ出しています。ちょっと財務に詳しい人なら売上に対する経常利益率を見るとこんな顔になります。
要するに利益率が高すぎるんです。
普通の会社は優良な会社でも20%あればいい方なのに、50%くらいあります。
控えめに言って化け物みたいな優良企業です。
キーエンスがなぜこれだけ優良な成績を叩き出しているのかは別記事で考察しているので、今回は一旦置いておきます。
とりあえず前回通りに、キャッシュフローを見てみましょう。
う~ん。。なんだかフリーキャッシュフローがデコボコしてますね。。
直近の二期だけ見ると、直前の2019年3月期は辛うじてフリーキャッシュフローが黒字ですが、その前の2018年3月期は赤字じゃありませんか!!
おいおい、これはもしかしてキーエンス危ない会社なんじゃないか??
別の意味でヤバいキーエンス
結論から言いますと、キーエンスは全然ヤバくないんです。
有価証券報告書の連結キャッシュ・フローを見てみると分かります。
この連結キャッシュ・フロー計算書というのは、冒頭の3つのキャッシュフローをさらに詳細に見ることのできる資料になります。
以下がその資料です。
営業活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュ・フロー
と3つのキャッシュフローがあって、その内訳が載っているのが分かるでしょうか。
その中でも注目すべきは黄色で塗りつぶした投資活動によるキャッシュ・フローの中身です。定期預金の増と有価証券(いわゆる株です)の増があり得ない額になってます。
この資料、百万円単位ですよ?
つまりキーエンスは2年間で1.6千億円を定期預金に預け、3.1千億円分の有価証券を購入したことになります。
投資キャッシュフローにも種類がある
一般的な企業であればこの投資キャッシュフローは機械装置や建物といった設備投資のためにマイナスになります。
ところが、キーエンスの場合は違います。
キーエンスはセンサー等の機械を売る製造業でありながら、自前の工場を持たない、いわゆるファブレスと呼ばれる体制を取っています。自前の製造工場を持たなければ大きな設備投資も不要です。そんな会社で投資キャッシュフローが大きいという事は、ほぼ定期預金や有価証券といったものが対象なのです。
定期預金も有価証券も一応投資キャッシュフローに分類されますが、ほとんど現金同等物ですから、本当の意味での投資とは言えません。ただの留保です。なので、その分を除いてフリーキャッシュフローを算出すれば、数千億にも上る超黒字がキーエンスの実態なのです。
本当にそんなにお金を持っているのか確認
同社が大量の定期預金や有価証券を持っている確認をする方法としては、貸借対照表という資料があります。同じく有価証券報告書の以下の部分です。
ここでは会社が持っている資産と負債、純資産の内訳を見ることができるのですが・・・はい、ドン。
お判りでしょうか。19年3月時点で
現金預金・・・4.7千億円
有価証券・・・3.9千億円
投資有価証券・・・5.6千億円
投資有価証券というのは短期売買を目的としない有価証券の事ですから、すぐに売却する事はできないですが、ほとんど現金と同じ価値がある資産という意味ではほとんど変わりません。
全部合わせれば1.4兆円。
国家予算か!
キーエンスが大量の現金同等物を抱え込む理由
普通の会社ではお金を会社がため込むことは良いこととはされません。一般的には少ない資本から効率よく稼ぐことが経営者の技量として評価されますし、オーナーである株主からすれば、無駄に金をプールさせるくらいなら、還元してもらいたい、というのが正直なところでしょう。それでもキーエンスがこれだけ留保し続けているのは、キーエンス創業者の滝崎氏の考え方が強く反映されているものと思われます。
滝崎氏はほとんどマスコミに出てませんし、自伝なども出していないため、はっきりとした話は分かりませんが、キーエンスの前に設立した会社を潰してしまったそうです。その失敗を糧として考え抜いた末に出した答えが、銀行からの借り入れに絶対に頼らないで済むようにキャッシュを留保する、無借金経営だったのです。
キーエンスがお金を留保するのは、その意思を今でも持ち続けているためであると考えられます。
まとめ
というわけで、就活生の方に伝えたいのは、危ない会社を見抜くには利益ではなくキャッシュフローを見るべき、というのは間違いありません。利益を偽る事はできてもキャッシュフローを偽る事はできないからです。ただ、一見してフリーキャッシュフローがマイナスだからといって、その会社が危ない会社とは限らない、という珍しい例を今回はご紹介しました。
良い会社の見つけて入社をしたいのであれば、こういった事例も知っておくと面白いと思います。是非参考にしてください。
当ブログは企業の課題や理想を考えてマンガにしたり、企業の分析を記事にしたりしているので、もしご要望があり都合が付けば、企業の財務分析などもやろうと思います。奮ってコメントください。
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