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【2150】ケアネット~有価証券報告書の読み方~

結論

今の財務状態は悪くない。ただ体質はそれほど良くないと思われる。

 

目次

 

事業概要

先ずはケアネットの事業についてです。

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ビジネスモデルは以前分析したアイティメディアと同様です。コンテンツを提供する事で会員を集め、有料コンテンツで会員から収益を得る一方で、会員に対して製薬会社の情報を発信して、製薬会社から広告料orマーケティング指導料を得るビジネスモデルのようです。アイティメディアはITやマーケティングでしたが、ケアネットは医療・製薬業界に特化しているようです。

 

セグメントも見てみます。

セグメントは製薬会社から広告料orマーケティング指導料を得る「医薬営業支援サービス」と、有料コンテンツ料を会員から受け取る「医療コンテンツサービス」の2つです。

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売上の比率は医薬営業支援サービスが87.8%を占めています。

まあ、そうだろうな、という感じです。

同社のサービスは2つとも性質が同じで、いずれも情報を提供するサービスです。

情報の向け先が医者向けなのか、製薬会社向けなのか、の違いです。

医者という職種はもともと医師免許さえあれば食いっぱぐれる心配のない職種です。つまり必死に情報を集めなくてもある程度は稼げる。

対して製薬会社は医者に薬を買って貰わなければ絶対に稼げない。

どちらが必死に学ぼうとお金を出すかは明らかです。

そうした性質が売り上げの比率に現れているのかな、と推測します。

 

 

 

業績推移

元々はそれほど利益率は良くなかったようですが、段々と伸びてきています。

経常利益率7.7%⇒9.0%⇒14.3%⇒15.0%⇒18.2%

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利益率が改善されている状況をどう解釈すべきか。。

つまり企業体質が向上していると捉えてよいのか、それとも単にビジネスの性質上、原価があまり変わらないため、売上が伸びれば伸びるだけ利益率が良くなる体質だからか。

現時点での経営方針における目標は以下です。

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この経営目標の成長性、収益性の視点は理にかなった視点だと思います。

同社のビジネスが成長するには医師会員数を増やすのが間違いなく絶対条件でしょうし、その一方で営業利益率などの質的な部分も入れています。

ただ、正直に言って収益性に関してはこれだけでは不十分です。視点こそ示されていますが、それらを「伸ばす事」としか目標設定されてません。どれくらいの利益率が適正だと考え、どこに焦点を合わせるのか、そこまで考えて初めて指標は意思決定に繋がります。

言い方は悪いかもしれませんが、具体的な目標の無いままでは「みんな頑張ろうね」レベルにしか使えません。何をどう頑張ればよいか分かりません。

また、流動比率自己資本比率流動資産比率というのを健全性の指標にしているのにも若干不安を覚えます。私個人の意見ですがこれらの指標はざっくりし過ぎていて、あまり意味がない指標です。具体的に言えば、流動比率は現預金以外にも売掛金や仮勘定など正体の分からないリスク資産もごっちゃにしてますし、自己資本比率も全ての負債のそれぞれの性質を無視して一緒くたに考えるざっくり指標です。これらが高い低い言った所で健全性が担保できるとは思えません。

総合的に見て、指標目標は「会計のテキストからそれっぽい指標を持ってきました感」があります。

 

ただし、言うだけの事はフォローはしているようで、過去分の分析をしていますので一応見ます。

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着実に会員数を伸ばしており、それに応じて医療営業支援サービスの売上が伸びているのが分かります。ただ、やはりというか、医療コンテンツサービスは伸びてません。。

 

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確かに分析はしていますが、具体的に何を目指すのかが見えません。具体的に利益率が何%を目指す、とか目標が無ければ、分析しても「ふうん・・・だから?」で終わってしまう気がします。これは体質としてイマイチです。

 

ここだけ見ている限り 、組織としての優良な体質はなく、会員数が伸びて売り上げが伸びたので利益率も伸びました、という、行き当たりばったりで伸びているだけのように見えます。

きちんとした体質が備わっていないと、逆風になった際に統制がきかず、一気に弱くなる恐れがあります。

 

 

 

キャッシュフロー

昨年だけ投資有価証券を購入しているせいで、フリーキャッシュフローが赤字になりかけてますが、概ね安定したキャッシュインがあるようです。とはいえこれはIT企業共通の性質なので、同社が傑出した能力を持つ証にはなりません。

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B/S(貸借対照表

次に資産状況の確認です。

現預金は全体の46.5%と多めですね。さすがはIT企業。

ただちょっと気になる売上債権の滞留期間。売掛金の滞留期間(売上債権/売上×365)が悪化してます。

昨年:70日⇒今年:95日

随分回収が遅くなりました。

キャッシュが豊富ですから当面資金繰りには困らないでしょうが、このまま悪化が続くと債権の質自体が悪い可能性がありますから、貸倒で大きな損失を被るリスクもあります。まあ、検収から支払いまでが3か月という大手企業は普通にありますからまだグレーですが、注意が必要です。

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あと、投資有価証券が半分くらいに減ってます。

普通に考えたら売ったのかな、とも思ったのですが、キャッシュフロー計算書の売却による収入に差額分が載ってない。多少売っているようなんですが・・・金額が全然足りません。

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で、理由がこちら。

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その他有価証券という有価証券は基本的に短期で売買しないので、評価額を損益計算書に反映させないのですが、かわりに評価額の上下を純資産の中のその他有価証券評価差額金という勘定にぶち込みます。

ただ、1年前に投資有価証券を大量購入して、さらに評価差額金が205百万計上されて、2019年は236百万円の下落、、1年でこれだけ評価額が増減するってどういう事なんでしょうか。。凄く不安です。。ナニコレどこの株?

私はこれに関する記述を見つけきれなかったので、知っている人いたらだれか教えてください。

 

負債の方は有利子負債ないので、財務としては悪くないのかな、という感じです。

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ただ、役員賞与が倍になっているのはちょっと嫌です。せめて業績と同じくらいの伸びにすべきではないかと。。投資家に対してフェアではない感じがします。

 

 

 

まとめ

足元の財務体質はとりあえず健全だと思います。

目先の利益体質は良くなってきているものの、それが本当の意味での体質改善であるという判断はできません。上記内容からはあまりしっかりしたビジョンを持って経営できている印象もありません。

後はちょっとその他投資有価証券が何なのか気になる。。

どこかに書いてあったのか・・・?しかし業績分析にもそういう部分に触れていないっていうのはいかがなものかと思う。何やってんだろ。。

その他有価証券の件は目先の損益にこそ反映されてないですが、いずれは何らかの結果として現れることになります。やっている事の意図が分からないと、どんな結果が生まれるのかも読めません。

基本的には経営陣におかれましては、良く分からないM&Aやら証券投資にうつつを抜かさず、本業の効率目標をしっかり立て、その目標達成に必要な改善に粛々と尽力して頂きたいです。

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

企業分析リンク

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