結論
一株3,000円は確かに低評価だったが、同社の価値が市況に影響されやすいNAVをベースにしている以上、市況次第でどうとでも転びかねない。コロナの時に恐怖で売られすぎたのも無理からぬことだと思う。
目次
前置き
ソフトバンクグループ(以下SBG)は調査リストにありませんでしたが、読者様にリクエストされたので分析します。
SBGを分析するにあたっての指針検討
正直、リクエストされても、SBG分析はやろうかどうか迷いました。
SBGの分析が厄介な理由は色々あるんですけど、最も厄介なのは頻繁過ぎる買収、売却に伴う資本関係の異動です。
直近だけでも携帯会社ソフトバンクの上場、アリババ株の売却、スプリントとTモバイルの合併、アームを買ったと思ったら部分売却の検討など、信じられない規模の組織変更を滅茶苦茶やってます。
その下の孫会社には親子上場の会社がいくつもぶら下がっていたり、ZOZOやらLINEを買収してZホールディングスにしたりと、もうわけがわからん。
この複雑な資本異動の何が悪いのかというと、連結決算数値の推移がほとんど意味を為さなくなる可能性が高いのです。
連結決算とはつまり、資本関係のある親会社、子会社、孫会社の財務諸表を合体させ、相互の取引を相殺させる事でグループ全体の状況を把握する事です。
しかし、資本関係が頻繁に変わり、グループの範囲が変わって昨年の前提と当年の前提が違ってくると、推移を比較する意味がなくなります。
例えば仮に主力セグメントの一つであるソフトバンクを売却する事になったら、SBGの連結BSからソフトバンクの資産負債がごっそり抜けてしまい、売却前と後では連結BSも連結PLもすっかり様子が変わってしまう筈です。
会計数値を見るうえで数値の推移が追えないのでは、会社の状況を読むことは困難で、結局孫氏の投資手腕とかAIという分野のイメージとか、見せかけの損益インパクトとか、曖昧な要素でしか判断できなくなってきます。それってもはや妄想とか信仰とかになってしまって、厳密な意味での分析と真逆じゃないかな、と。
だから無理ぽ~(*_*;
とか思っていたんですが、SBGの有価証券報告書をぼーっと眺めているうちに、一つ分析の糸口になるアイディアが浮かびました。
連結が分からないなら「投資持株会社の単体決算」だけ見ればいいじゃない。
連結決算というのは以下の会社の財務諸表を全部合体させて作るわけです。
この中の会社がグループに出たり入ったりすると、年度比較がわけがわからなくなる。
そこで、変化し続ける全体像を見ようとするのではなく、これらの会社の核となる親会社SBGの単体財務諸表に注目してまず全体像を把握してみる、ということです。
これは結構面白い切り口なんじゃないかと。
勿論これで完璧に分かるわけじゃありません。問題が少なくとも2つあります。
①単体PLは原則傘下の企業からの配当とか経営指導料なので、分析の意味がない。
持株会社は一般的に傘下企業の配当や経営指導料だけが収入になっており、特にSBGのような成長株に投資している持ち株会社の場合、成長に資金を使ってしまって配当を出さない会社がほとんどです。そこで計上される売上や利益には、ほとんど意味はありません。
②単体BS上は傘下企業たちの価値が反映されず、原則取得価額のままの評価
単体BS上では、子会社とか、関係会社、投資先の株式は基本的に取得した時の評価額のままなので、今の評価額がどうなのかはさっぱり反映されません。
というわけで単体PLは役に立たないので無視します。
しかし、単体BSは十分に使える気がします。
業績SBG単体BSにおける子会社株式、関係会社株式、投資有価証券はブラックボックスとして別枠でおいといて、資産全体のどれくらいがブラックボックスなのかを見るだけでも一旦全体像が見えるんじゃなかろうかと。
全体像が把握できた上で、ブラックボックスをアニュアルレポートなどで分析する。
最終的にはどうしたって非上場企業ばっかりの「ビジョン・ファンド」がブラックボックスとして残るのでしょうが、もうそこは定性分析するしかないので各々が勝手に判断してください、という形でおk。
手順をまとめましょう。
①通常通りの全体像の把握(財務諸表以外)
・事業内容
・経営方針
・従業員、役員報酬
・大株主の状況
・株主還元
②単体BSの分析(ブラックボックスの割合とそれ以外の内容)
③ブラックボックスの分析(SBG側の資料を簡単に検証)
この手順なら、ギリギリまで全体像が掴めるんじゃなかろうか、という試み。
さあ、面白くなってきた(腕まくり)。
事業概要
まずはSBGの事業についてです。
SBGの事業はビジョンファンド事業、ソフトバンク事業、アーム事業、ブライトスター事業、その他事業の5つです。
事業の説明に早速書いてありますが、昨年まであったスプリント事業を売却する方向へ進んでいるためセグメントから除かれているそうです。
詳細はWikipediaを見ていただければざっくりわかります。
問題は、このスプリント事業の売上高です。
以下がスプリント事業ですが売上高が3.5兆円で、グループ内の売上規模としてはソフトバンク事業に次ぐ2番目です。
こういう会社をポンと売ってしまえる。
その決断力は凄いですが、それゆえに連結財務諸表が分かりにくい。
2021年3月期の売上はこの分がくんと落ちるハズです。
丁度先日2021年3月期の決算短信が出てましたので、覗いてみます。
やはり売上高が2020年3月期の9.4兆円から5.6兆円に激減してますね。
決算短信上は前年対比で比較できるように、2020年3月期の数値もスプリント分を除いているっぽいのでこれだけ見ると違和感ないですが、こうして事業売買が行われ続けると、残ってる事業の過去推移だけ見せられても、生存者バイアスかかってそうで、私は気持ち悪いんですよね。
単体B/Sをベースに状況を追うという手法は、SBGには有効に機能するかもしれません。
経営方針
経営上の指標としては株主価値の最大化。
株主価値=保有株式価値-純有利子負債だそうです。
さらに財務安全性のためにLTVを25%~35%を上限として管理するとのことです。
いかにも投資ファンド的な目標設定です。
とはいえこの保有株式価値というのは厄介です。
アリババやソフトバンクのように上場している会社の株なら株価×株数で出せるので分かりやすいですが、非上場の会社の株をどう評価しているのか。
100%子会社のアームや、ビジョンファンドで投資している企業のほとんどは、未だに投資に見合うだけの実績を上げていない会社ばかりです。
となれば、その価値は間違いなく市況環境に依存します。
例えば今のように金余りが起きている時は、将来への期待感からかなりの高値で評価されたりします。実際最近もSBGが出資しているベターという会社がSPACを利用した上場を経ることで、資金を得たという話がありました。
ソフトバンクG出資の米ベター、SPAC上場へ 評価額77億ドル | ロイター
上場すれば元々の価値より遥かに高く取引されるのが普通なので、これによってSBGはそれなりの売却益を得られる可能性があると思います。
しかし逆に言えば、市況が悪化し、例えばSPACが何らかの形で大きな問題を引き起こし、上場どころか会社の引き受け手が減ってしまった場合、価値は間違いなく下落する事になります。
つまり同社の目標は市況に大きく左右されてしまう指標で、それが達成できるかどうかはSBGの努力や実力ではなく、単に市況の状況にかかっている気がします。
事業会社メインで分析している私からすると、地に足のつかない指標に思えます。
ちなみに市況の話が出たので捕捉すると、賢人バフェットは既に現在の状況に対して警鐘を鳴らしてます。
SPACは「キラー」とバフェット氏-アップル株売却「間違い」 - Bloomberg
バフェット氏は最近の個人投資家・デイトレーディングブームにも触れ、多くの人々がここ1年で株式市場という「カジノ」に参入したとの見方を示した。「ギャンブルの衝動が世界中の人々の間に非常に強く、時には巨大な勢いとなり、毎日カジノにやって来る人が出ていく人より多いような状況だ」と説明、 「しばらくは独自の現実を創り出すだろうが、いつ時計が12時を告げ、全てがカボチャとネズミに変わってしまうのかは誰にも分からない」と語った。
リーマンショックの時も事前に懸念を表明していた賢人の言葉は聞いておくべきかと。
リーマンショックから10年:ウォーレン・バフェットと金融危機
バフェットは、2003年にフォーチュン誌に寄稿したバークシャーの株主宛ての手紙で、デリバティブを「金融市場の大量破壊兵器」と呼び、注意を促していました。そして数年後、デリバティブが金融市場全体に問題を引き起こす可能性があることを予測していました。
バフェットの懸念は住宅市場に現れました。デリバティブが発達したおかげで、当時の人々は簡単にローンを組み住宅を購入することができたのです。バフェットは2005年、住宅市場についてこう述べました。「住宅価格が上昇を続けるなら、みんなの幸せは続くでしょう。ただし、それには値上がりを続ける住宅市場へ、次々と新しい買い手が出てくることが必要です。そのような新しい買い手は、住宅ローンは政府保証付きでノーリスクだと思っているに違いありません。」
2007年頃、住宅の差し押さえ件数が増加し、潮目が変わってきたように見えました。しかし、住宅価格は上昇を続け、ローン審査も緩い状態が続いていました。「住宅市場において、人々はひどい惨状を目の当たりにするでしょう。」とバフェットは2007年のバークシャーの年次報告会で語りました。
バフェットは、正しかったのです。複雑なデリバティブと信用力の低い住宅ローンは、米国の金融システムを危機的状況まで追い詰める原因となりました。
現状のカジノ状況において、SBGはまさに魅力的な投資先を豊富に抱えたディーラーのような立場ですが、バフェットの言う「カボチャとネズミに変わってしまう時」、ディーラーはこの指標を達成し続けることができるのか。。
普通に考えたら無理ですよね。
保有株式価値を目標にするのは、市場の変動が不可避である以上、長期的に見るとかなり無理のある設定という気がします。
従業員の状況、役員報酬
従業員もさすがにいい給与貰ってますね。。
もっとも、こんな複雑な会社の経理をやるくらいだったら、給与それなりでも普通の事業会社の経理やった方が気楽でいいですがね。。
一方、役員はどうかと言うと・・・
取締役の一人当たり平均は269百万円です。
しかしこれはあくまでSBGのみでの報酬で、各取締役はグループ内の子会社の役員を兼務してるため、プラスで役員報酬があります。
マルセロ・クラウレ氏は全部で20億円超。。凄いですね。
やはりこうしてみると日本関係者の報酬は少な目に見えます。
欧米の役員報酬傾斜の凄まじさを感じます。
個人的には欧米がどうであろうと、こんなに報酬渡す意味あるのかな、と思います。
役員報酬は本来、マネジメントとしての職務を遂行した報酬であり、仮に会社が赤字になったとしても役員は報酬を返上する事はありません。最終的な損益へのリスクは本質的に株主が負ってます。
つまり、この高額な役員報酬が妥当な水準だとしたら、こんな額の役員報酬を払わなければ担える人材がいないほど事業が複雑化している事になり、それは結局複雑な事を複雑なままに放置しているという意味で、マネジメントの能力が欠如している事を意味するんじゃないか。
したがって高額な役員報酬はいずれにせよ認めるべきではない、というのが当ブログの認識です。
もっとも、どこまでが高額な役員報酬なのか、というのが結局色々意見が分かれるのですが。。とりあえず当ブログはせいぜい2-3億が上限じゃないかな、と。
あとは自分でリスク取って増やしてほしい。
大株主の状況
生きるレジェンドである孫正義氏が21.25%持っていますが、さすがにこれだけの規模の会社となると意思決定を掌握するまでには至らないようです。
もっとも世間からもカリスマ的存在である同氏に、真っ向から反発できる人間がいるとは思えないので、意思決定権はほぼ孫氏にあるのでしょうが。。
一応関連当事者取引がないか見てみますか。
孫正義氏への経費立て替えが3.6億円ありますね。
普通の会社の経営者がこんな立替してもらっていたら、明らかに会社の私物化で要注意なんですが、配当金だけで172億貰っているような孫正義氏がそんなセコい真似する必要ないと思うので、スルーでよいでしょう。
しかし・・・すげーな。。
孫氏にかかると私の生涯年収は経費立替されるレベルなんですね。。
ちょっと私の生涯経費立替えてくれませんかね。。
株主還元
具体的な目標とかは一切書いてないので、あまり好ましい書き方ではないです。
ただ、孫氏に関しては株主還元という観点からするとあまり不安になる必要はないと思います。自身が大株主という事もありますが、昨年の株価暴落の際の大々的な自社株買いの実施などを見ても、結果的に実に見事な還元を実施してます。
これは分かっていても中々できる事ではないです。
なかなか痺れる発表です。
財務云々はBS見てみないと何も言えませんが、少なくとも株価の下落を放置したり、株主還元に興味のない人に書ける文章ではありません。
ちなみに「当社代表取締役会長兼社長孫正義は次のように述べています」は長いので、今後「孫氏(子)曰く」に略したら短いし、古代中国ファンにウケるのではないかと・・・
株主還元については、弟の孫 泰藏氏が創業したガンホーでも、パズドラのヒットに合わせてかなり大胆な自社株買いをして、短期間で株価は100倍以上になってました。
ガンホーの過去分析は以下。
ガンホーにせよ、SBGにせよ、他に類を見ない大胆な資本政策を取っていますから、ご兄弟揃って合理的決定を断行できる気質の持ち主なのは素晴らしいですね。血筋なんでしょうか。。
という事で、株主還元については少なくとも孫氏がかじ取りをしている間はそれほど心配する必要はないだろうな、と思います。
単体B/S
では、いよいよ数値分析いってみますか。
現預金が1.5兆円(9.5%)です。本当に国家予算級ですね。
問題のブラックボックス、投資有価証券、関係会社株式、その他の関係会社有価証券の合計が12.6兆円(82.6%)と資産のほとんどを占めてます。
持株会社ですから当たり前ですが。。
関係会社株式とその他の関係会社有価証券に※2がついているので、注記を参照。
う~ん。。
SBGがビジョンファンドⅠ、Ⅱに現金出資した分は、その他の関係会社有価証券2.7兆円(17.5%)で、現物(株式)を出資した分は関係会社株式に含まれ、金額は0.7兆円(4.3%)あるわけですね。
そして、12.6兆円からビジョンファンド分3.4兆円(=2.7兆円+0.7兆円)を差し引いた9.2兆円がアリババであったり、ソフトバンクであったりアームの取得価額ですよ、と。
後はこの12.6兆円の本質的な株式価値をどこまで正確に算出できるか、です。
先に書いた通り、この株式価値はかなり市況環境にかなり左右される筈なので、SBGが出している数値を鵜呑みにするのではなく、会社を一つづつ地道に調べて行った方がいいでしょう。アリババ、ソフトバンクといった上場している会社の時価総額は算出した方が良いかと。
次に負債・純資産です。
有利子負債は9.2兆円(60.5%)と滅茶苦茶借りてますね。絶対額としても、割合としてもここまで借りている会社はあまにお目にかかれないです。
いずれの有利子負債にも※8の注記がついているので、見てみます。
へ~・・・。
財務制限条項とは、金融機関が債務者に対して貸付を行う際に付与する条件のひとつで、その契約において、債務者の財政状況が定めた基準条件を下まわった場合に、債務者は期限の利益を喪失し、金融機関に対して即座に貸付金の返済を行うことと定められているそうです。
SBGの手元資金は1.5兆円ですから、もしこれらの条件の一つでも満たした場合、9兆円もの有利子負債の返済はかなり面倒かもしれません。
(あくまで単体で考えるとですが)
1は株式の減損損失次第ですね。
ちょっと気になるのは、昨年結構大々的に自社株買いして償却しているんですが、自社株って純資産から控除されると思うんですが、それは大丈夫なんだろうか。。まあ、さすがにそんな凡ミスで窮地に陥るなんてことはないか。。
2はソフトバンクは携帯会社としてそれなりの地位を確立してますから、突然債務超過とかはあまり考えにくいですが、SBGなどはかなりレバレッジかけてますから、特に景気後退時などに株式の減損とかがあれば考えられる気がします。
3は実際20年3月期で赤字でしたからね。。21年3月期は5兆円の黒字って話ですが、それもおそらく今年一年の劇的な市況のV字回復によるものと思われるので、もし市場が戻ってなかったらどうなっていたのだろう。。ちょっと不安です。
4は・・・なんか解釈が難しいからスルーで。。
どの条件も結構、市況が悪化したらマズイ気がしますね。
今起きている市場の盛り上がりは結構長期に渡ったので、次のリセッション局面は2-3年くらいにはなりそうな気が。。となるとそろそろ有利子負債を圧縮させて財務制限条項を外したりしないと危ない気がします。むしろ良くここまで攻めましたね。。
昨年の自社株買いの際に負債も返済する旨が書かれていたので、自社株買いに合わせて負債の返済もしている筈です。21年3月期の有報が出たらどれくらい減っているのか、見てみたいところです。
純資産は4.2兆円(27.3%)です。
例えば12.6兆円の株式評価額が何らかの理由で2/3とかになってしまうと、一気に債務超過に突入、さらには財務制限条項に抵触することになります。
2/3までの下落がどれくらい発生可能性があるのか、一応ラストパートで見ていきますか。
ブラックボックスの分析
最後に、できるだけブラックボックス(有価証券)を見ていきます。
SBG側の認識では、2020年3月時点で28兆円との事。
単体BSの取得価額が12.6兆円なので2.2倍以上の評価額というわけですね。
アリババ株とソフトバンク株は上場しており、ここに書かれている数値は2020年3月の株価をベースに算出したものと思われるので、客観的な数値として見てよいと思います。
この二つだけで18.6兆円ですから、多少ディスカウントして売却したとしてもこの2つの銘柄だけでも、元々の投資額である12.6兆円は賄えそうです。
いずれの株価も今のところは2020年3月からそんなに動いてないようですから、ある程度安心できそうです。
これなら仮に他の資産で減損が出たとしても、アリババ株、ソフトバンク株を売却すれば利益と相殺できそうです。
少なくとも財務制限条項の2の債務超過に陥る事はなさそうです。
アリババ株、ソフトバンク株以外は本当の意味でブラックボックスですが、仮に評価ゼロだったとしても、とりあえずどうにかなるわけですね。。
しかしそうなると、アリババ株、ソフトバンク株はSBGの安全性を担保する生命線ですから、SBG投資家はこの2つの会社の株価推移はフォローする必要があるんじゃないかと。
まとめ
単体BSを元にざっくりSBGの状況を見てみましたが、この手法なら連結BS・PLを見るより分かりやすく無駄に混乱しないで済むかもしれません。SBGは何かと目立つ会社ですからこの手法でフォローしてもいいな、と思いました。
2020年3月期のSBG単体での一株当たり純資産は以下の通り2,000円ほどです。
先の単体BSの内容で見た通り、アリババ株とソフトバンク株の現在価値だけでこの2,000円~3,000円の価値は十分担保されてます。後はTモバイル+アーム+ビジョンファンドの価値と発展成長期待が株価に乗ってくることになります。
そして直近の2021年3月期の決算発表を見ましたが、ここで見る限りビジョンファンドはえらく順調のようです。
2021年3月期 決算発表 | ソフトバンクグループ株式会社
うまく上場した株は3.94倍の評価額になってるようです。
素晴らしい成長です。
こうして見ていくと、なるほど確かに孫氏の言った通り昨年2020年3月頃の株価3,000円を下回る水準はエラく割安だったという事ですね。
しかし一方で、今の市況環境がSBGにとってかなり追い風になっているという事も忘れてはならないと思います。
孫氏の指摘している通り、SBGの群戦略という考え方からすれば、SBGの価値をNAVで評価するというのは妥当な方法です。しかし、その裏付けとなるのはアリババとソフトバンクの株価と今後どうなるか分からない非上場企業たちです。
そして賢人が警告しているように現在市場はカジノ状態にあり、SPACのような裏上場スキームが登場している今、確かにSBGのNAVはぐんぐん伸びても不思議はありません。
しかしそれがいつまで続くのか。
孫氏は300年続く手法として群戦略を唱えていますが、本当にこの成長の調子が300年続くとは私には思えません。
どこかでかならず景気後退が来るハズですから、そのタイミングで淘汰される会社も出てくるでしょうし、成長も停滞する時期がやってきます。そうなればコロナショック時のように大幅な赤字を計上し、高かったNAVが急落する可能性も十分にあり得ます。
SBGに投資する際はそのリスクを忘れてはならないと思います。
本記事は主に有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。
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