結論:メタプラネットは減価版ビットコインファンドと化しているのでは。。
メタプラネットという会社がXで話題になっていたので、検索すると今年140円くらいだったのに、3,575円になっているらしくちょっと調べました。
【メタプラネット】[3350]株価/株式 日経会社情報DIGITAL | 日経電子版
これは凄いですね。。1年で20倍以上とは夢がある成長です。
問題はその理由なんですが、業績自体はものすごい事になってます。
【メタプラネット】[3350]株価/株式 日経会社情報DIGITAL | 日経電子版
23年の売上高は2.6億円、経常利益は▲4.1億円の赤字・・・今のメタプラネットの時価総額は1,296億円です。
【メタプラネット】[3350]株価/株式 日経会社情報DIGITAL | 日経電子版
数値を簡略化すると前期に100円の売上で▲150円の経常赤字の会社が40,000円以上で売買されているわけですね。。何を言っているのかわからねーと思うが、私にも分かりません。
有価証券報告書を見ると同社はホテル事業のようですが、ホテル事業にこんなボラティリティがあるわけないので、おそらくそれ以外の要因だろうなーとは思います。
今年起きたことを追ってみましょう。
株価の上昇は5月頃に起こっているため、当時のリリースを追ってみると、先ず1Qの決算短信が出ていたので、業績を見てみましょう。
メタプラネット[3350]:2024年12月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結) 2024年5月15日(適時開示) :日経会社情報DIGITAL:日本経済新聞
昨年に比べれば売上が増えて赤字も縮小傾向ではありますが、赤字である事は変わりないので、大した問題ではないです。やはり株価高騰の理由は業績ではないです。
B/Sをチェックします。
大きいものとしては土地建物で7割近くを占めていて、あとは現預金ですね。
土地建物が大きいのはいかにもホテル事業という感じで特に違和感はありません。
有価証券報告書を見ると、ホテルローヤルオーク五反田というホテルを持ってるようです。
場所が場所ですし、今の首都圏の地価高騰は凄いので、土地としての価値はそこまで棄損されてないとは思いますが、ホテル事業としてはキャッシュフローが赤字ですから、売却してしまった方が儲かるかもしれません。
また、気になるのが投資その他の資産です。
長期未収入金とその他の合計が5.3億円ほどに対して、貸倒引当金が4.4億円ほど設定されてます。
投資その他の資産はほとんど全損みたいなものです。
これについては「引き当ててさえあればB/Sの残高としては大きくないから無視していい」、という話ではなく、過去に一体どういう失敗をしているのかで意味が変わります。結構前からあるようですが、詳細な内容は分かりませんでした。。
内容は分からない以上多くは語れませんし、どういう懸念があるかは、具体例をあげると風説の流布とかになりそうなので、憶測で語れません。ただ、言えることがあるとすれば、こういう数値があることは「好ましくはない」です。
ざっと数値を見ただけでも事業としても財務体質としては既に瀕死のようです。
ではこの瀕死の会社がなぜあれだけの株価上昇を見せているのか。
次のリリースはこれです。
メタプラネット[3350]:ビットコインの購入に関するお知らせ 2024年5月28日(適時開示) :日経会社情報DIGITAL:日本経済新聞
子会社が破産手続きして、ビットコイン買いましたというお知らせです。
続いて臨時株主総会を開き、定款にビットコインへの投資、資産運用、付随する業務全般を加えてます。
定款というのはその会社がどんな事業をしていくのかを定めており、会計上のルールとして、定款に書かれている業務に関する収益だけが「売上」として計上されます。定款に載せるという事は、これを本業にして売上を立てるという意思表示になります。
要するに今後はビットコインに投資して売上あげていきますよ、という事ですね。
そしてそのあとすぐに経過報告。
14億5千万円相当を保有しているとのこと。凄いですね。
ここからはもう、あまりにリリースが多すぎるので件名のみで。
7/16-8/8
8/8-9/10
9/24-10/21
乱れ飛ぶ増資ー借入ービットコインの文字。。
その間、ビットコインの価格はどうなっているかというと、11月頃から猛烈な上昇があります。ビットコイン肯定派のトランプ大統領が選挙で優勢になった頃からですね。
この動きは当然メタプラネットに連動してます。
さらにメタプラネットの強い意志を感じる2Qと3Q決算資料
敢えて暗号資産と暈さず、「ビットコイン」と書くとのこと。
ほんとに書いてる。
また、驚くべきは1年も経たないうちに増資やら借入やらで負債、純資産合計が5倍になって、その資産の半分以上をビットコインが占めているということです。同社は凄いスピードでビットコインファンド化してます。
そして最近のリリースですさまじいこと書いてます。
メタプラネット[3350]:ビットコイントレジャリー事業の開始に関するお知らせ 2024年12月18日(適時開示) :日経会社情報DIGITAL:日本経済新聞
日本円の価値が不透明だからビットコインで価値の保全を図るとのことです。Xで円暴落論が盛り上がることはありますけど、企業のリリースでこんな刺激的な言葉に出会うとは思いませんでした。。痺れます。。
ただ、言わんとする事は分かるんですけど・・・それやるんだったらもう、別にメタプラネットに投資するんじゃなくて、投資家は自分でビットコインに投資すればいいんじゃないかな、という気がします。
いかなる金融手法を用いたとしても、企業は資本調達コストがある以上、メタプラネットに入ってくるお金はその時点で減価せざるを得ない。その上役員達の給与やらなんやらで経費も差し引かれてしまうとなれば、調達資金をビットコインに換金したところで、投資としてはマイナスからのスタートにしかならない。。メタプラネットがマイナス分を本業で取り返せるなら分かりますが、本業のホテル業は赤字状態。。
見る限り、ビットコインの値上がりがなければ、メタプラネットが収益をあげるのは困難ですから、投資家はメタプラネットに投資するなら、間にメタプラネットを挟まずに、自分でビットコイン買った方が良くないかな・・・と。。
こういう変化を実行するのがどんな人なのかな、とCEOとCOOを確認した所、さもありなん。ゴールドマンサックスとかソロモンとか外資系投資銀行系出身の方々ですね。。
ホテル業からビットコインへの転身、資金調達⇒購入の快進撃が凄まじいですからそっちが本職の方なんだろうなーとは思ってました。
ただ、基本的に投資銀行がやっているファンドの組成やトレードって、資本コストの低い資金調達ルートや、損失を出してもどうにかやっていけるだけの安定した収入源が確保された上で成立するもので、メタプラネットのように元の事業が赤字で、外部から資金調達するしかない会社が始めるのは無理がある気がします。
事業会社が投資会社に変化する事例では、ウォーレンバフェットのバークシャーとかがそうですけど、あれもブルーチップとか保険会社のような潤沢資金を持つ企業を買収する事で資金調達のルートを確保してから飛躍しているので、いきなりそれ自体がキャッシュフローを生まないビットコイン投資を始めるのは事業としてかなり厳しい気がします。
現在のメタプラネットの時価総額1,296億円に対して、メタプラネットが保有しているビットコインは24年3Qで45億円です。しかもそのすべてが会社の取り分ではなく、有利子負債も抱えています。ビットコインの値上がりがどうとかそういう次元の話ではないです。どう考えてもこの時価総額は常軌を逸してます。私程度の凡人には到底理解しえない神々の領域です。
あくまで私は一つの事業として、今後同社がどうなるのか、興味を持って注視していきたいなーと思います。