大手企業から中小企業への転職はできても逆は無い?
転職している最中、「転職で年収を上げる事は難しい」とか「大手から中小への転職はあっても逆は無い」という話を何度かされたことがあります。しかし、私は20代後半に新卒で入った会社から売上規模ベースで150倍以上の優良大手企業に転職する事ができ、給料も上がりました。
その間、働きながらの転職活動中(といっても2か月ほどでしたが・・・)で並行して4社ほど大手企業を受けていました。結局、最初に内定を出してくれた会社に転職しましたが、他の会社も結構な好感触で、役員面接までコマを進めていた所もありました。いずれも上場企業の中でも優良な企業で、選考を辞退するのが惜しい会社さんばかりでした。
しかしこれは、私の経歴が特別秀でているわけではなく、ポイントを押さえれば誰でもできる事ではないかと思うので、ポイントを解説したいと思います。
ポイント1:転職理由は「これまで」でなく「これから」を語る
ポイント2:エッジをたてる
ポイント3:早めに情報収集を始める
では始めます。
目次
ポイント1:転職理由は「これまで」でなく「これから」を語る
これは別に中小から大手への転職に限った話ではありませんが、転職に挑む心構えとして重要なポイントですので、深掘りしたいと思います。
転職理由がネガティブなのは当たり前
この記事を読んでいる方は、何らかの形で転職に興味を持っている方ではないかと思いますが、貴方が転職を考える理由は何でしょうか。「給料が安い」「人間関係が悪い」「仕事のやりがいが無い」「自分が成長できる環境が無い」などなど、現在の環境に対して何らかのネガティブな感情があるからではないでしょうか。当然です。そもそも給料が高くて、人間関係が良好で、仕事のやりがいもあって、成長できる環境にいる人が転職を考えるわけがない。仮に転職を考える人がいても、その人は転職すべきではありません。つまり、転職理由などネガティブなのが当たり前なのです。
面接官が聞きたい事
面接する担当者は必ずと言っていいほど転職の理由を聞いてきます。しかしそれは、決して転職者の愚痴や建前が聞きたいのではありません。彼らは転職する人が「これからどうしたいのか」を知りたいのです。
アドラー心理学の名著「幸せになる勇気」の中ではそういった側面を、分かりやすく表現しているので、要約します。
要約
”カウンセリングに来る人が語るのは3つの事だけです。「憎いあいつ」「可哀想な私」そして「これからどうするのか」。私はカウンセリングに来た人が「憎いあいつ」「可哀想な私」について語る時は全て聞き流します。そうした言葉には何の意味もありません。過去にどうであったかは今を考える上で一切関係が無いのです。”
これは面接でも言える事です。面接官は面接を受けに来る人の恨み節や愚痴が聞きたいわけではありません。かといって心にもない建前を聞いても意味がありません。その人が「転職後、何を大事にしていこうとしている人か」が知りたいのです。
転職理由の具体例
私が転職理由を聞かれた時はざっくりこんな事を言ってました。
「私はもっと多くの分野に関わり、世界レベルで働ける職場を希望しています。御社のような大企業であれば定期的なローテーションもあり、様々なタイプの分野、人に関わる事もできますし、自身の能力を高める事ができると考えました」
何となく前向きで良い印象を持たれそうじゃないでしょうか。
しかし元々の理由は以下です。
「私は今の上司達が生理的に受け付けません。同僚の女性社員にコミュニケーションと称して触るなどセクハラ行為をしていますし、指示はいつも抽象的で後から問題が起こると、全て部下に丸投げして散々に罵倒して無能扱い。その上司達が中途で入って以来、部署は10名弱の小さな所帯だというのに、2年も経たないうちに派遣社員含めて10名ほどを新規採用をしてそれ以上が辞めるか解雇されました。最悪なのは会社の規模が小さいため私が希望しても異動先が無く、もし転職をしなかった場合、私は最悪定年まで彼らの下で働かねばならないのです。やってられません」
転職の理由としては中々じゃないでしょうか。まさに「憎いあいつ」と「可哀想な私」のオンパレードです。しかしこれを言ったところで、面接官は「気持ちは分かるよ」と共感しつつも、最後は
と言われて終わると思います。
私は面接で嘘や建前を語ったわけではありません。わざわざ嘘や建前など準備せずとも、本音の理由の中から「憎いあいつ」と「可哀想な私」を除き「これからどうするか」だけを抽出すれば、必ず転職の前向きな理由は作れるはずです。
まとめるとこういう事です。
貴方が転職理由を聞かれた時、
- 「これまで」の事を語れば全てが言い訳になります。
- 「これから」の事を語れば先方にやる気が示せます。
面接でどちらを語るべきかは明らかだと思います。
重要なのでポイントを繰り返します。
転職理由は「これまで」でなく「これから」を語る、という事です。
面接官から「これから」を考えた理由も聞かれるかもしれませんが、「これから」を決めてしまえば、後はテキトーにその「これから」に結び付きそうなエピソードを見つくろって準備しておけば宜しかろうと思います。
ポイント2:エッジをたてる
これは採用に限らず、モノを販売する際にも有効な手法です。転職活動は言ってみれば自分を売り込む営業です。競合と比較して記憶に残る部分が無ければ、売り込む事は非常に困難です。
大手企業は中途採用に何を求めるか
そもそも、大手企業は中途採用においてどんな人材を求めているのでしょうか。
新卒採用であれば、優良な大手企業はただでさえ希望者が多い状態が普通なので、学歴だけではなく、コミュニケーション能力、積極性、柔軟性といった人間的な総合力が求められ、選別されます。(実際には人としてどうなんだろう・・・という人も大手企業に居たりする不思議はありますが)つまり、優良な大手企業は新卒採用で十分にバランス力のある基礎人員は確保できるわけです。
もし貴方が採用担当なら、中途希望者の中からどの人を選ぼうかという時、どんな人を選ぶでしょうか。最低限のレベルで足切はするとしても、平凡で目立った特徴の無い人をわざわざ選ぶでしょうか。組織に新しい発想を入れる意味で、何かしら興味を引くような経歴や特徴ある考え方の持ち主、つまりエッジの立った人材を採りたいと思わないでしょうか。
ああ・・・
あ?俺はヘッドハンティングだ。転職じゃねえ。俺を見んな。
もし中途採用として大手企業の面接に進むには、足切りラインを越える事に加え何か一つで良いので、自分なりのエッジを持つと一歩リードできるといえます。
エッジとは特別なスキルの事ではない
転職で評価されるエッジというと、例えば経理なのにプログラムもできますとか、営業だけどエクセルの検定資格持ってますとか、何かスキル的なものをイメージするかもしれません。中小企業であればそういったスキル的なものがあると高く評価されるかもしれませんが、大手企業は基本的にマニュアルや仕組みがある程度しっかりしている事が多いので、勉強する意思があれば現在の資格などは関係ありません。むしろ他のやり方の先入観がある分マイナスに取られる可能性すらあります。必要なのは仕事に対する姿勢が分かるエピソードです。
私の場合は、別記事でマンガでネタにしたエピソードを詳しく説明しました。その解決手段自体は難しい知識ではありません。しかし、既存の業務に疑問を持ち、自分で調べ、考えて、実際にその問題を解決する事ができるというその姿勢が評価されました。このエピソードで私は「ただ従順に業務をこなすだけの人間ではない」という印象を与える事ができたのではないかと思います。
私は他にもいくつか、目を留めて貰えそうなエピソードや自分の特徴を考えておき、経歴書に書いたり、チャンスがあればそれらを引き出せるように心がけていました。いずれも特別な事ではありません。日々の仕事をする上で注意している事や心がけている事をそれっぽくまとめただけです。しかしその普通の事が、表現の仕方さえ考えれば魅力的に映る事もあるのです。
貴方には、貴方自身が思う以上に価値があるかもしれない
実を言えば、これは私が新卒の際に就活アドバイザーから学んだ手法です。私はリーマンショック直撃の世代で、「100社受けても内定をもらえない」なんて話のある世代でした。そんなご時世ですから、私も4年生の11月まで内定どころか面接にもたどり着かない事ばかりでした。その時に、無料で就活相談をやっていると聞き、新宿にある事務所に行きました。その時に私はアドバイザーさんに学生時代にやったことを一つ一つ聞いてもらい、こう言ったらどうか、というアドバイスを貰いました。すると、驚いた事にスルスルと内定が取れるようになったのです。
私はアドバイザーから指摘される中で、それまで自分では短所だと思っていた部分や、大した事が無いと思っていたエピソードが、表現さえ変えればとても強いエッジになる事に気付かされたのです。つまり「特別である必要はない」「今持っているものの表現だけを変えれば良い」と感じる事ができたのです。
これは自分自身の価値の再発見という意味で、非常に重要な事だと思います。自分自身が当たり前と思っている事でも、他の人にとっては当たり前でない事があるのかもしれない。これは誰かに相談する機会が無ければ、決して見えてこない事実です。もし、転職をするかどうか迷っている場合であっても、自身の価値を見直す意味で、一度は無料のキャリアカウンセリングを受けてみる事をお勧めします。
【参考】無料キャリアカウンセリングがある会社さん
なお、相談をする相手の相性などもあるので、あまり一社に拘らずにとりあえず何社かキャリアカウンセリングを受けてみて、自分が一番良いと感じた所に本相談されるのが良いと思います。こればかりはカウンセラーの適性や、個人のフィーリングの問題なのでどこの会社が良いというのは一概に言えません。私は一つ受けただけで、適格なアドバイスをくれる美人のお姉さんに当たりましたが、かなり幸運な部類の人間でしょう。(その時の無料相談で得た知見が転職時にも活きたわけですからコスパは無限大です)
まとめるとこういう事です。
- 中小から大手へ転職するポイントは「エッジをたてる」という事。
- エッジとは特別な事ではなく、今あるものをどう表現するかだけの事。
- 自身のエッジを見つけ出すには、適切なキャリアカウンセラーを見つける事。
ポイント3:早めに情報収集を始める
早め早めの情報収集は、大手企業の中でも「優良な」大手企業を見つけるために有効です。今すぐに転職する気が無かったとしても、いずれ可能性があると思うなら、早々にエージェントを見つけて、情報収集をしておいた方が吉だと思います。
ブラックな大手企業も存在する
大手企業上場企業と言っても、その内実は様々です。毎年ブラック企業を選定するブラック企業大賞では「ワタミ」や「セブンイレブン」といった、一般によく知られた有名企業の名前が選出されています。
大手企業を転職を希望する方々は、何かしらの就業環境を改善するために大手企業を希望しているものと思いますので、メジャーというだけのブラックな大手企業に就職してしまっては、本末転倒です。単に上場企業、大手企業という肩書は就業環境の保証にはなり得ないという事を先ず覚えておかねばなりません。
その通り、規模はその会社の性質を表さない!重要なのは情熱だ!
ソーデスネー
常に大量の中途社員を求めている大手企業は、ちょっと危ない
ブラックな大手企業を見分ける方法ですが、常に大量の中途社員を求めている大手企業には注意した方が良いです。前のポイントでも指摘した通り、大手企業というのは通常、十分な新卒社員を確保できる筈なので、そもそも中途社員は新卒社員が辞めた場合の補充という意味があります。しかしちょっとやそっと新卒社員が辞めた程度であれば大手企業は中途を採用しません。何故なら(大手企業に限った事ではありませんが)会社組織というのは上に行けば行くだけ管理職の枠が限られているため、ある程度の人員淘汰はむしろ望むところなのです。つまり、中途社員を採用する大手企業というのは、それだけで結構な離職率の証明なのです。無論、大きな組織では色々な事が起こりますから、中途採用=ブラックとは限りませんが、常に大量の中途社員を募集している会社には、何らかの慢性的な職場環境問題を抱えていると考えて良いと思います。
Aクラス未満の人間ばかりを採用するから離職率が上がるんだ。びふぉあ株式会社は情熱に欠けたAクラス未満の人間は社員と認めないから、辞めようと解雇しようと離職率は常に0%だ。
全くです。情熱に欠けた人間など存在していないのも同じです。よって解雇しようと自主退社しようと会社には何の関わりもありません。
早め早めの情報収集とゆとりある姿勢が有意義な転職を実現する
常に大量の中途社員を求めているかは、エージェントに登録し、しばらくの間求人の様子を見ていれば分かります。常に中途社員を求めている会社は常に求人を出していますから、リストをチェックしていれば嫌でも目に留まるのです。勿論、エージェントさんにそういう会社は除いて下さい、と要望することはできるでしょうが、エージェントさんは企業側から仲介料を貰う商売であり、何度も求人を出してくれる大手企業はむしろ優良顧客になります。そういった立ち位置から考えても、全てのエージェントが常に転職希望者側の立場に立ってくれるわけではありませんから、そこは自身で見極めるしかありません。
株式投資には「株を買うべきかどうかを株式仲介人(ブローカー)に聞いてはならない」という格言があります。これは転職エージェントにも言える事です。
まとめますと
- 会社の質は会社の規模でははかれない
- 常に中途を必要とする会社には注意する
- その会社に転職すべきかどうかは転職エージェントに聞いてはいけない
という事です。
最後のポイントは、「早めに情報収集を始める」という事でした。
以下は関連記事
www.freelance-no-excelyasan.com
会社に勤めながら転職情報を調べる事は、会社に対する裏切りではありません。社会にとって自分にどんな価値があるのか、他にどんな世界があるのかを知りたいと思うのは人として当然の欲求です。海外を知らない人が、日本を素晴らしい国と理解できるでしょうか。情報収集を常に怠らないのは賢明な証であると私は思います。
最後に
転職というのは人生の大きな岐路です。今回は私自身の経験から「中小から大手へ転職するためのポイント」にターゲットを絞った記事を書かせて頂きましたが、この内容は大手企業に限った話ではなく、全ての転職について応用できる事だと思っています。弊ブログを読んでくださった読者様が少しでも良い職場環境に恵まれ、人生を豊かにする一助となれば幸いです。